切り抜き
皆さま毎日寒い中お疲れ様です。
今年もはやいもので年の瀬。くれぐれもお身体ご自愛下さい。
先日新聞のある切り抜きをSNSで見つけ、皆さまにご紹介したかったので以下、抜粋します。
(私よ私、忘れたの?)
今流行りのオレオレ詐欺。私は"とし子さん"を思い出している。
終戦の年の秋、当時住んでいた鳥取県米子市の自宅の玄関に、彼女は立っていた。
「私よ、私。忘れたの?女学校2年の時に転校した、しげこ。担任は南先生だったでしょ」
記憶になかったが一晩泊めてと言われ、母に許してもらった。
晩御飯で、私が「米が足りないの」と言いながら芋ご飯を差し出すと彼女は驚くほどの速さで食べた。そして私の隣で眠り、翌朝出ていった。
そして数日後、また現れた。
「この間はありがとう。米が足りないと言っていたわね。私、闇米を買える場所を知っているの。」
彼女はゴミゴミした迷路の様な場所に案内した。
買ってきてあげると言うのでお金を渡すと、「ここで待ってて」と言って去っていった。
気付いた時には遅かった。
母は「おまえが騙す方でなくて良かった」と言った。
被害届は出さなかったのにしばらくして警察に呼ばれた。何人も騙しては彼女は捕まり、私の話をしたようだった。
その後、復員してきたという「しげこの兄」がうちにきた。「妹が迷惑をおかけしたそうで」と減刑嘆願書を持ってきた。
母は「喜んで」と判を押した。
生きていたら私と同い年のはず。しげこさん、どうしていますか。
和歌山県 敏子 無職・77歳
この文章の本質は「しげこさん」でもなく書き手でもなく許す勇気を持ち、おまえが騙すほうでなくて良かったと言ったお母様の存在だと思います。
終戦の混乱のなかで持っていた「慈悲の心」
嫌なことがあったり人を非難したい気持ちになった時は読み返してみたいエッセイに出会った年の瀬。
心穏やかに。皆さま、良いお年を。
(遊佐)